
ブレスジャーニー:呼吸という名の“内なる旅”
私たちは、1日に2万回以上呼吸をしています。
けれど、その多くは無意識で、浅く、必要最低限の「生きるための呼吸」です。
けれどもし、この呼吸を「意識的に」「深く」「連続的に」行ったとしたら?
そこには、私たちの知覚を超えた“もうひとつの領域”が待っています。
それが、呼吸の内なる旅・ブレスジャーニー(Breath Journey)です。
呼吸は「意識」と「無意識」をつなぐ架け橋
心理学の観点から見ると、呼吸は自律神経に意識的に介入できる動作とされています。
心がざわつけば呼吸は浅くなり、落ち着けば自然と深まります。
逆に、呼吸を整えることで感情や思考にも変化が起きる――これはヨガや禅の世界で古くから知られていることでもあります。
20世紀後半、スタニスラフ・グロフ博士によって体系化された「ホロトロピック・ブレスワーク」は、深い・速い・連続的な呼吸により、変性意識状態(Altered State of Consciousness)に入り、抑圧された感情やトラウマの解放・統合を目的とする心理療法でした。
この技法をベースにしたブレスジャーニーでは、言葉では到達しにくい無意識の層に呼吸でアクセスします。
呼吸による「変性意識状態」とは?
変性意識状態とは、普段の論理思考をいったん脇に置き、感覚や身体・記憶にダイレクトにつながっている状態。
催眠、夢、瞑想、トランスなどもこのカテゴリに含まれます。
ブレスジャーニーのセッション中、人によっては以下のような体験が自然に起こります:
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抑えていた感情(怒り、悲しみ、恐れ)が浮上してくる
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幼少期や過去の記憶がイメージとして現れる
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身体的な震え、しびれ、熱さや冷たさなどの感覚が出る
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言葉にならない“安心感”や“統合感”に包まれる
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光、音、空間の感覚が広がる(神秘体験的)
こうした現象は、スピリチュアルな“体験”と捉えられがちですが、心理学的には深層心理(潜在意識)との再統合プロセスと見ることもできます。
それは、過去の出来事が心身に与えていた無意識の影響を、呼吸のプロセスを通じて“完了させていく”作業なのです。
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インナーヒーラーと出会う旅
ブレスジャーニーには、もうひとつの重要なキーワードがあります。
それが「インナーヒーラー(内なる癒し手)」。
他の言い方ですと、ハイヤーセルフとも魂意識と近いようなイメージかと思います。
セッション中、外からは何の指示も出されません。
呼吸の流れに任せ、音と空間の中で、自分自身が内側から導かれていく。
そのプロセス全体を導いているのが、あなた自身の中にある叡智や感受性。
つまり、「インナーヒーラー」です。
このインナーヒーラーは、心理療法の文脈で言えば“自己治癒力”や“自己調整力”に近いもの。
人間には、本来「回復に向かう力」が備わっている。
ブレスジャーニーはその力を信頼し、尊重するための旅でもあります。
神秘学的視点から見る呼吸
神秘学や古代の智慧においても、呼吸(プラーナ、ルアハ、ブレス)は「生命エネルギー」として扱われてきました。
たとえばインド哲学では、呼吸は“プラーナ(氣)”であり、霊性と肉体を結ぶもの。
キリスト教の“Holy Spirit(聖霊)”も、「息(breath)」を語源に持つと言われます。
つまり呼吸とは、目に見えない“魂の動き”そのものとも言えるのです。
現代の私たちが忘れがちな“身体と魂のつながり”。
それを静かに、しかし確かに思い出させてくれるのが、ブレスジャーニーの時間なのかもしれません。
初心者こそ、呼吸に触れてみてほしい
ブレスジャーニーは、派手なテクニックや神秘的な修行ではありません。
むしろ、「ただ仰向けになって、呼吸を続けるだけ」です。
けれど、その「だけ」の中に、
驚くほど多くの気づきと、静かな再生のプロセスが含まれています。
最初はうまくできなくてもかまいません。
ただ、自分の呼吸を信じて、委ねてみてください。
その先に、
意外なほどあたたかく、深い自分自身との再会が待っているかもしれません。